2016/09/28

Update: Kollmann, Julius Konstantin Ernst. "Plastische Anatomie des Mmenschlichen Körpers" (1886)






コルマン『人体の造形解剖学』(1886)
Kollmann, Julius Konstantin Ernst. Plastische Anatomie des Mmenschlichen Körpers. Leipzig: Verlag von Veit & Comp; 1886. / 235×163mm, 624pp.
著者:1834-1918. ドイツの解剖学者,発生学者.ミュンヘン大学臨時教授(1870-8),バーゼル大学解剖学教授(1878-1913).
画家:シダー(Schider, Fritz. 1846-1907).ドイツの画家.コルマンのアシスタント.

 初版にはサンドウ(Sandow, Eugen. 1867-1925)らをモデルにした写真図版が含まれていない.同じ図版を別のページでも使用している点は新装版と同様である.前のページに振り返って参照するというよりは、連続的に読んでほしいという計画がうかがえる.
 コルマンの美術解剖学書は,解剖所見から得られた図だけでなく,様々な書籍を編纂したものになっている.アルビヌスの骨格図や,サルベージのグラディエーターは局所図として新たに描き起こされた.ルカエの女性トルソ図骨格のプロポーション図も見られる.
 通常,腰椎は側屈方向の可動域が少ないとされるが,コルマンの図では大きく左側に屈曲していて興味深い.
(初版,筆者蔵)

2016/09/23

Update: Duval, Mathias. "Précis d'anatomie a l'usage des artistes" (1881)




 


デュヴァル『芸術家のための解剖学』(1881)
Duval, Mathias. Précis d'anatomie a l'usage des artistes. Paris: A. Quantin; 1881. / 208×135mm, 336pp.
著者:1844-1907. フランスの解剖学者,国立高等美術学校の解剖学教授.
画家:キュイエ(Cuyer Edouard. 1852-1909.)フランス国立高等美術学校出身の画家,彫刻家.高等美術学校の講師,パリ市立美術学校の教授,デュヴァルのアシスタント.

フランス国立高等美術学校の解剖学講座の教授デュヴァルによる美術解剖書.リシェが出版されるまでは影響力のあった書籍で,英訳など翻訳版がヨーロッパに普及した.引用は,サルベージの他にキャンパーとデュシェンヌが見られる.
(新装版,筆者蔵)

2016/09/21

Uchida, Ken Ed. "Atlas of human anatomy for art students" (1975)


内田謙編著『美術解剖図譜』日本出版サービス,1975
Uchida, Ken Ed. Atlas of human anatomy for art students. Tokyo; Japan publication service: 1975. / 255×182mm, 139pp.
著者:女子美術大学産業デザイン科講師.
画家:吉野辰海(Yoshino, Tatsumi. 1940-)

 本書は東京藝術大学の美術解剖学教室で講義テキストとして使用していた『美術解剖学アトラス』を再編集して出版された書籍である.主にフロイープの図版を引用し,補足で単一の筋肉図を掲載している.図版の引用は他にコルマン,美術解剖学の歴史ではヴェサリウスレオナルドリシェが引用されている.吉野が描いた補足図は細かく,例えば大腿直筋は反射頭の起始まで描いている.おそらく医学書から描き起こしたものだろう.
 内容は,美術解剖学の歴史,全身の筋骨格,頭部,体幹,上肢,下肢の順の各論,各部位の横断面図,人体のプロポーションとなっている.
(改定第2版,筆者蔵)

2016/09/20

Kawamura, Tamiji. "Geiyou kaibougaku (Artistic anatomy)" (1913)






川村多實二『藝用解剖學』興文社,大正2(1913)年
Kawamura, Tamiji. Geiyou kaibougaku (Artistic Anatomy). Tokyo: Kyoubunsha; 1913. / 220×152mm, 274pp.
著者:1883-1964. 日本の動物学者.京都帝国大学動物学教授.京都市立美術大学学長(現・京都市立芸術大学,任期:1957-1963).

 本書が川村の最初の著作である.出版に至った経緯は不明だが,川村は当時の美術において人体解剖学の需要が高まっていたが,和書で記述された適切な美術解剖学書がないためとしている.川村の執筆当時の役職は,京都帝国医学大学生理学教室の助手であった.
 内容は,美術と解剖学の関係,骨格と筋の総論・各論,表情,動物,人体プロポーションとなっている.各論は脊柱,胸腹部,肩,上腕,前腕,手,腰部,大腿,下腿,足,頸部,頭部の順で医学書的に整理されている.筋骨格図や運動図の引用元は不明(おそらく医学書であろう),キャンパーの顔面角,デュシェンヌの表情筋研究,ベルの表情研究など美術に関係のある解剖学書が掲載されている.美術作品は,主に新古典主義の巨匠アントニオ・カノーヴァの彫刻が使用され、ミケランジェロのダヴィデや古代ギリシア彫刻のラオコーン像,ボルゲーゼの剣闘士などの彫刻も掲載されている.
(初版,筆者蔵)

2016/09/16

Nakamura, Fusetsu "Geijutsu kaibougaku (Artistic anatomy)" (1915)






中村不折『藝術解剖學』日本美術学院,大正4(1915)年
Nakamura, Fusetsu. Geijutsu kaibougaku (Artistic anatomy). Tokyo: Nihon bijutsu gakuin; 1915. / 220×152mm, 185pp+30plates.
著者:1866-1943. 日本の洋画家.太平洋美術学校校長.

 中村不折は日本の著名な洋画家である.久米桂一郎の師であるラファエル・コラン(1850-1916)に師事した.オーギュスト・ロダン(1840-1917)にも面会し,後年ロダンに弟子入りする萩原禄山(1879-1910)の面倒も見た.
 本書はリシェをベースとする美術解剖学書で,多色刷り木版画の簡素な図が本文とともに掲載されている.リシェの解説にはない,呼吸器や胸腹部内臓,深層の筋などは引用元が不明だが,医学系の解剖学書から引用されたようである.随所に手探りで解剖学を学んだ印象がうかがえる.
 大腿筋膜の肥厚部(Richer's band)は大腿横腱膜となっている.大腿筋膜の肥厚部は,腸脛靭帯の表面から起こり,内側広筋の内側縁あたりにかけて横走する繊維走行のはっきりした結合組織である.不折の掲載した名称は,肉眼で見た印象に近い.
(第4版,筆者蔵)

2016/09/15

Tsurumaru, Akihiko "Geiyou kabob zusyu (Atlas of anatomy for artists)" (1961)


鶴丸昭彦編著『芸用解剖図集』芸術学院,昭和36(1950)年
Tsurumaru, Akihiko. Geiyou kabob zusyu (Atlas of anatomy for artists). Tokyo: Geijutsugakuin; 1961 / 300 x 210mm, 80pp+1plates.
著者:昭和の社会運動家

 プロレタリア美術の画家,イラストレーターによる美術解剖学書.様々な美術解剖学書から一冊にまとめている.図版は,マーシャルフロリープから骨格と筋肉図,トムソンから写真とスーパーインポーズ図が引用されている.これらに加えてオリジナルのスーパーインポーズ図が掲載されている.リシェの引用は見られないが,大腿筋膜の肥厚部にリッチャー氏靭帯と書かれている.
 どの年代でRicher’s Bandの名称が定着したかについて興味がある.
(第3版1961年,筆者蔵)

2016/09/14

Berger, Ferdinand "Handbuch Zum Gebrauch für das anatomische Studium des menschlichen Köpers" (1842)





バーガー『芸術家や学生のための人体解剖学研究の手引き』(1842)
Berger, Ferdinand. Handbuch Zum Gebrauch für das anatomische Studium des menschlichen Köpers besonders für bildende Künstler und Dilettanten der Kunst. Berlin: Bei C. G. Lüderitz; 1842. / 350 x 265mm, 15pp+12lith.
著者:ベルリン王立美術学校の教授.

 骨学と筋学が簡潔に解説された美術解剖学書.アルビヌスから引用された全身の3面図の骨格,浅層筋,深層筋の図と巻末にオリジナルの側面と後面から描かれた体表図とそのスーパーインポーズ図が掲載されている。体表図はロープを引く姿勢と,棒を振りかざした姿勢が描かれている.
 棒を振りかざした姿勢は,バルビゾン派の農夫が鍬を振る姿勢と重なるが,ドイツで出版された書籍のため,地域が少しずれる.
(初版,筆者蔵)