2016/05/19

Update: George Brandt Bridgman “Bridgmans life drawing” 1924





George Brandt Bridgman “Bridgmans life drawing” 169pp, Bridgman, New York, 1924

 アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨーク講師のジョージ・ブリッジマンによる『ブリッジマンの人体素描』。原著は現行版よりも一回り大きい。図版を配置した構図が流れを持っており、ブリッジマンの書籍に対する計画がうかがえる。
 19世紀の近代美術解剖学の外に出た内容で、美術的な要素が散りばめられている。例えば、幾つかのテーマに沿って人体図が描かれていて、Building, Balance, Rhythm, Turning or Twisting, Light and Shade, などがある。これらは医学の解剖学にはほとんど見られない。バランスや回旋は脊柱の構造と関係があるが、そうした局所解剖学的な構造解説ではなく、あくまで全身や体の起伏をどのように把握するかに重きが置かれている。
 改めて見ると、ブリッジマンの人体表現は柱状装飾や立方体などと結びついており、建築的である。
(第7版、筆者蔵)

リプリント版解説:Reprint ed.

2016/05/18

Jenő Barcsay “Anatomy for the Artist” 1958(2nd ed.)


Jenő Barcsay “Anatomy for the Artist” 142pp, Corvina, Budapest, 1958 (2nd ed.)

 ハンガリーの画家、ブダペスト芸術大学の応用解剖学教授イエヌ・バーチャイによる『芸術家のための解剖学』。筋肉の図や医学的解説は医師のBanabás Somogyiが手がけている。
 頭部など作家による表現の強い図であるが、全身の筋骨格を網羅した書籍である。英訳版によって世界中に普及した。日本でも和訳版が『デッサンのための美術解剖図』として出版された。
 原著はドイツ語で、各項目1ページに満たない簡単な説明のみが添えられている。伝えたい構造の多くは図によって示されている点も美術家たちに受け入れられた理由の1つであろう。解剖図はリシェ様式だが、下肢にリシェバンドは見られない。体表のスケッチが見事で、反射光などの現象に左右されないストロークが形態を追うのに適している。そして、隅々まで描かず、注目させたいところに描写の密度を高めるというのも、本書の図の特徴だろう。素描的な表現である。
 巻末にはバーチャイの作品や、ブダペスト芸術大学の学生が描いた運動時の骨格図も添付されている。学生が解剖図を描けるということは、バーチャイの美術解剖教育が伝わっている証拠であろう。
(第2版、筆者蔵)

Charles Rochet “PETIT ATLAS D’ANATOMIE ARTISTIQUE” 1899



Charles Rochet “PETIT ATLAS D’ANATOMIE ARTISTIQUE” 48pp, Henri Laurens, Paris, 1899

フランスの人類学者ロシェットによる『美術解剖学の小アトラス』。
 この小冊子は1886年に出版された『美術に応用された解剖学、人類学、民俗学の論文』から図版だけをピックアップしたアトラス版になる。図版数とサイズは前著と同じため、前著は美術解剖書という位置付けで出版されたことがわかる。小型のアトラスは持ち運びに便利なため、19世紀の中期から後期にかけて何冊か出版された。
 ボリス・レールによればロシェットは1869, 1884, 1886, 1892, 1895, 1899年に美術解剖学関連の書籍を出版している。その中には、「美術用民俗学」や「美術用人類学」が含まれるかもしれない。
(初版、筆者蔵)

2016/05/17

Charles Rochet “TRAITÉ D’ANATOMIE D’ANTHROPOLOGIE ET D’ETHNOGRAPHIE APPLIQUÉES AUX BEAUX-ARTS” 1886




Charles Rochet “TRAITÉ D’ANATOMIE D’ANTHROPOLOGIE ET D’ETHNOGRAPHIE APPLIQUÉES AUX BEAUX-ARTS” 276pp, Librairie Renouard, Paris, 1886

 ボザールの人類学教授シャルル・ロチェットによる『美術に応用された解剖学、人類学、民俗学の論文』。
 図版は鋭いストロークで陰影がつけられている。体幹と上肢の図にファウ、前腕の筋膜の図にブールジェルからの引用があるが、下肢などは新たに描き起こされている。タイトルに人類学とあるが、内容に人種差などの記述はなく、骨学と筋学の順で記述された美術解剖学書である。
 冒頭にはフランスを中心にした美術解剖学の歴史が掲載されている。掲載順は、ヴェサリウスアルビヌス、フランスの彫刻家ブーシャルドン、比較解剖学創始者のヴィック・ダジール、サルベージショシエガーディヒッポリテとクロケット、ブールジェル、ファウの順で書かれている。
(初版、筆者蔵)

Update: Edouard Lanteri “Modelling A guide for teachers and students” 1902





Edouard Lanteri “Modelling A guide for teachers and students” 153pp, Chapman & Hall, Ltd., London, 1902

サウスケンジントンのロイヤルカレッジで彫刻の教授を務めたエドゥアルド・ランテリ(1848-1917)による『モデリング 教師と学生のための手引き』。原著はリプリント版よりもふた回りほどサイズが大きい。
 彫刻の技法には大まかに分けてモデリングとカービングがあり、モデリングは粘土などを芯材に盛り付けて造形する方法で、カービングは石材や木材を鑿を用いて彫り進めて造形する方法のことである。本書は前者のための手引書で製作手順を段階的に撮影した造形プロセスも載っている。
 内容としてはオリジナリティが非常に高いが、クセが少なく読みやすい。おそらくランテリにとって彫刻的に肝要な部分をきちんと盛り込んだのであろう。像の姿勢も興味深く、例えば側面図は腋窩と側腹部の観察が邪魔にならないように工夫されている。解剖図は線を交差させて陰影を描くクロスハッチングではなく、単一方向の線で形を描いている。この単一方向の線を用いた描写は、20世紀の中頃にメディカルイラストレーターのラッセル・ドレイクが画法として確立しているが、ドレイク以前に類似した描写法が存在したようである。
(初版、筆者蔵)

リプリント版解説:reprint ed.

2016/05/16

Johan Christian Gustav Lucae “Das Skelet eines Mannes in Statischen und mechanischen Verhältnissen nach graphischen Aufrissen in halber Grösse” 1876



Johan Christian Gustav Lucae “Das Skelet eines Mannes in Statischen und mechanischen Verhältnissen nach graphischen Aufrissen in halber Grösse” 8pp+3plates, Christian Winter, Frankfurt, 1876

ゼンケンベルグ研究所、解剖学教授のヨハン・クリスティアン・グスタフ・ルカエ(1814-1885)による『機械的に示した静止時の男性骨格』。
 本書は、3つ折りの骨格プロポーション図と、その図に関する短い解説が添えられた書籍である。図は前面、側面、後面の3方向から描かれ、広げた図の高さは身長の半分程度である。
 人体のプロポーションは、美術史において古代ギリシャから長年研究され続けたテーマである。プロポーションの概念は17世紀のマルティネスから解剖学と結びつけられ、特に人体の大きさや長さを決定する骨や骨格の構造は、その後の時代によく引用された。本書も美術との親和性が高く、美術家のためと明記されてはいないものの、デューラーやレオナルド、ドイツの美術解剖学者のザイラーを引き合いに出している。
 ルカエのプロポーションは、頭蓋の幅と高さを基準としている。幅は頭蓋幅の2倍が胸郭と骨盤の幅になっている。高さでは脳頭蓋の高さ(頭頂から前鼻棘まで)を基準とし、それを11と1/4倍した長さが身長になっている。他に、頭頂からオトガイまでの高さは1と1/2、頭頂から鎖骨までの高さは2、頭頂から胸郭下口までの高さは4、頭頂から恥骨結合までの高さは5と1/2、頭頂から足首までの高さは11倍となっている。
(初版、筆者蔵)

2016/05/15

Update: Eugene Wolff “ANATOMY FOR ARTISTS BEING AN EXPLANATION OF SURFACE FORM” 1925, 1948 (3rd ed.)




Eugene Wolff “ANATOMY FOR ARTISTS BEING AN EXPLANATION OF SURFACE FORM”  194pp, H. K. Leuis & Co.Ltd., London, 1925, 1948 (3rd ed.)

 ロンドン・ユニヴァーシティ・カレッジの解剖学講師ユージーン・ウォルフ(1896-1954)による『芸術家のための解剖学 人体の表面形状についての解説』。初版はウォルフが30歳の時に出版された。図版は同カレッジのスタッフ、ジョージ・チャールトン(George Charlton, 1899-1979)による。
 イギリスの美術解剖学における脂肪体の記述は、本書が初出となる。図版は、ドイツのモリエール(1924)を彷彿とさせる簡易な概念図で、骨と体表を点描、筋を線描で表現している。
 図はリシェ(1890)ファウ(1845)の影響を受けており、骨格上の筋の単一図や、骨格の輪郭が描き込まれた体表図と、浅層の筋図が隣り合うように配置されている。脂肪体の図は女性が描かれ、体表から観察できる脂肪体の起伏が解説されている。巻末にはヴェサリウス(1553)コールマン(1886)などの解剖図が掲載されている。
(第3版、筆者蔵)

リプリント版解説:reprint ed.