2015/06/30

Juan de Arphe y Villafañe “VARIA COMMENSURACION PARA LA ESCULPRTURA, y Arquitectura”(1585)



Juan de Arphe y Villafañe “VARIA COMMENSURACION PARA LA ESCULPRTURA, y Arquitectura”294pp, Spain, 1585

スペインの版画家、解剖学者のJuan de Arphe y Villafañe (1535–1603)による“VARIA COMMENSURACION PARA LA ESCULPRTURA, y Arquitectura”(1585)
 Vesaliusの“Fabrica”出版から約50年後に出版された、木版画による初期の美術解剖書である。幾何学、人体解剖学、生物学、建築の4巻からなり、建築や彫刻を制作するための内容にまとめられている。
 第2巻の人体解剖学の項目では、プロポーションと骨、浅層の筋、体表の投影図、運動時の投影図が描かれている。筋の解剖図を見ると胸骨角や肋骨弓のディティールが興味深い。胸骨角のディティールは古代彫刻にもよく見られるような実際の骨格とは違った起伏が描かれている。肋骨弓は外腹斜筋や腹直筋ではなく骨格が露出したような図になっている。
 18世紀ごろの美術解剖のテキストブックと比較しても図版が多く網羅的で、初期から美術解剖の基本的な内容が編纂されていたことがわかる。本書は18世紀ごろまで出版されていた。
(ウェブアーカイブ版)

2015/06/26

Boris Röhrl “HISTORY AND BIBLIOGRAPHY OF ARTISTIC ANATOMY Didactics for depicting the human figure” (2000)



Boris Röhrl “HISTORY AND BIBLIOGRAPHY OF ARTISTIC ANATOMY Didactics for depicting the human figure” 493pp, GEORG OLMS VERLAG, Hildesheim, 2000

RheinMain大学の研究者Boris Röhrl (1961-)による“HISTORY AND BIBLIOGRAPHY OF ARTISTIC ANATOMY Didactics for depicting the human figure(美術解剖の歴史と文献目録 人体描写の教育法)” Röhrlはもともとグラフィックデザインやタイポグラフィを学んでいたが、写実表現の歴史研究を行う中で本書をまとめたようである。
 内容は第一部:歴史と第二部:文献目録に分かれ、歴史の項目では解剖学を用いていなかった古代美術から、15世紀以降は1世紀ごとに美術解剖の推移を書いている。また、歴史をまとめる上で、書籍の種類を分類し、美術解剖が取り扱ってきた内容がどのようなものであるかをまとめている。
 文献目録は美術解剖の歴史上有名なものは網羅しているため、本研究でも心強い参考文献である。補助的にヨーロッパやアジアの文献まで含むが、日本のものを確認する限り全てではないようで、今後は各国の美術解剖の歴史をまとめる研究も重要になってくるだろう。
(初版、筆者蔵)

2015/06/25

Reference: James Lancel McElhinney et al., “Classical Life Drawing Studio” (2010)


Reference: James Lancel McElhinney & the Instructors of The Art Students League of New York “Classical Life Drawing Studio: Lessons & Teaching in the Art of Figure Drawing” 206pp, STERLING, New York, 2010

アメリカの画家、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークの講師James Lancel McElhinney(1952-)とリーグの講師陣による、“Classical Life Drawing Studio: Lessons & Teaching in the Art of Figure Drawing”。序文はアメリカの画家Will Barnet(1911-2012)によるもの。本書はリーグの学生がこれまで描いた素描と講師の素描を編集したものになっている。McElhinneyはリーグにて人体素描と基本的な解剖学を教えている。
 美術解剖学の直接的な内容はないが、Bridgmanの元で美術解剖学を学んだ学生の素描や、McElhinneyの素描の他に、リーグで解剖学を教えているFrank Porcuの素描も掲載されている。Bridgmanの学生の素描には余白にBridgmanのデモンストレーションと思しき図が描かれている。余白に構造を描くのは、生体の素描のみならず石膏像の素描でも見られる。
(初版、筆者蔵)

2015/06/24

Walter L. Strauss “THE HUMAN FIGURE BY ALBRECHT DÜRER: THE COMPLETE DRESDEN SKETCH BOOK” (1972)


Walter L. Strauss “THE HUMAN FIGURE BY ALBRECHT DÜRER: THE COMPLETE DRESDEN SKETCH BOOK” 355pp, Dover, New York, 1972

アメリカの美術史家、Abaris Booksの創設者Walter Leopold Strauss(1922-1988)による“THE HUMAN FIGURE BY ALBRECHT DÜRER: THE COMPLETE DRESDEN SKETCH BOOK”。ドイツの画家Dürer(1471-1528)通称ドレスデンのスケッチブック(1501-1519、ドレスデンのザクセン州立大学図書館蔵)を編纂したもの。原著は見開きだが、再編集に当たって片ページづつキャプションを添えて掲載している。このスケッチブックは人体のプロポーションに関する研究が記されており、幾つかの図はDürerが晩年に手掛け、死後に出版された『人体均衡論四書』(1528)に掲載された。
 プロポーション図の多くは体表観察によるもので、いくつかの図はLeonardoの素描手稿からの模写である。模写は上肢と下肢の骨格と神経の走行を描いたもので、美術の図としては珍しい腕神経叢が描かれている(p263、Straussは神経ではなく腱としている)。
 Dürerの徹底した人体の捉え方は今日の見方と比べても先見の明があり、 Bridgmanの“Constructive Anatomy”(1920)に通じる直方体で構成された人体を描いていたり、直線のガイドを用いて一方向の視点の図から投影図を描いている。
(リプリント版、筆者蔵)



2015/06/21

Edmond J. Farris “ART STUDENTS’ ANATOMY” (1961)


Edmond J. Farris “ART STUDENTS’ ANATOMY” 159pp, Dover, New York, 1961

ペンシルべニア芸術アカデミーの教授、Edmond J. Farrisによる“ART STUDENTS’ ANATOMY”。原著は1935年にJ. B. Lippincitt Companyから出版され、Dover Publications版は第2版をもとにリプリントされた。イラストは妻のL. Augusta Stroman Farris、写真は陸軍医学博物館のRoy M. Reeveによる。
 本書は解剖図にAlbinus “Tabulae”(1747)を使用した美術解剖アトラスで、Farrisがアカデミーで行った教育内容を編纂した内容になっている。“Tabulae”から引用した全身図の他に、全身図と同じポーズをとった男女と少年の裸体写真、肩や膝の関節を写したX線写真が掲載され、体表と内部構造の関係を把握していくスタイルになっている。オリジナルの図は写真に基づく線描とAlbinusの骨格図に筋のシルエットを加筆したもの。巻末には学生作品が掲載され、アカデミーでの美術解剖教育の成果作品もわずかだが掲載されている。
  “Tabulae”の解剖図Hale/Coyleの翻訳以前からたびたび美術解剖の書籍に登場する。美術領域との親和性が高い解剖図譜の一つである。
(リプリント版、筆者蔵)

2015/06/19

Bibliography of early Japanese artistic anatomy(1890-1944)

Bibliography of early Japanese artistic anatomy

1890『画学類纂 巻2』「美術必携人體解剖編」本多錦吉郎: 編, 彰技堂
1982『美術應用解剖學』田口和美: 校/田口茂一郎: 選, 大倉書房
1898-1900『美術評論』「藝用解剖學」森林太郎/久米桂一郎, 畫報社
1903『藝用解剖學 骨論之部』森林太郎/久米桂一郎, 畫報社
1908『美術解剖學』鈴木文太郎/藏田貞三, 松崎蒼虬堂
1913『藝用解剖』瀬戸近: 編, 正學社
1913『美術解剖學ノ栞』櫻井恒次郎, 南江堂書店
1915『藝用解剖學』川村多實二, 興文社
1926『藝術解剖學』中村不折, 日本美術學院
1931『アルス大美術講座 第1巻』「藝用解剖學」久米桂一郎, アルス
1934『アトリエ美術大講座 デッサン科 第2巻』「人體素描法」中村不折, アトリエ社
1935『洋画研究』「人體に就いて」石井鶴三, 學校美術協會
1941『應用解剖 人物畫法』藤島武二, 崇文堂
1942『顔の形態美』西田正秋, 聖紀書房
1943『藝用解剖圖集』鶴丸昭彦: 編著, 藝術學院
1944『美術解剖学論攷』西田正秋, 聖紀書房
1944『藝用人體解剖圖譜』柳亮: 監修, 大下正男発行

伊藤恵夫「美術解剖学に関する文献目録」『美術解剖学雑誌 Vol.2 No.1』pp63-64, 1994

2015/06/18

Gottfried Schadow “POLICLET : ODER VON DEN MAASSEN DES MENSCHEN NACH GESCHLECHT UND ALTER” (1834)





Gottfried Schadow “POLICLET : ODER VON DEN MAASSEN DES MENSCHEN NACH GESCHLECHT UND ALTER” 132pp, VERLAG VON ERNST WASMUTH A-G., Berlin, 1834

プロイセン王立芸術大学の学長、彫刻家のJohan Gottfried Schadow(1764-1850)による大型書“POLICLET : ODER VON DEN MAASSEN DES MENSCHEN NACH GESCHLECHT UND ALTER(ポリュクレイトス 人の性別や年齢における尺度)。序文はMaximilian Schaefer。タイトルのPolyklet(英:Polykleitos)は前5世紀に活躍した古代ギリシアの彫刻家の名前。最古の造形理論である“Canon”を著したとされる。“Canon”には人体計測によるプロポーションが記述されていたとされ、本書も人体のプロポーション図と計測値が記述されている。
 幼児から老人まで様々な年齢の男女が線描によって表現され、実際の人体を想定した図だけではなく古代彫刻をモデルにした図もある。全身図のほかに顔面、手などの部分図がある。
 計測と図に記されたガイドラインは体表からのもので、内部構造を用いた解剖学的な情報はないが、こうした計測値は体表に近い骨格の寸法が投影されていることがしばしばある。
1905年、第10版、筆者蔵)

2015/06/15

J.B. de C.M. Sanders/Charles D. O’Malley “THE ILLUSTRATIONS FROM THE WORK OF ANDREAS VESALIUS OF BRUSSELS” (1973)


J.B. de C.M. Sanders/Charles D. O’Malley “THE ILLUSTRATIONS FROM THE WORK OF ANDREAS VESALIUS OF BRUSSELS” 252pp, Dover, New York, 1973

カリフォルニア大学の解剖学教授John Bertnard de Cusance Morant Sanders(1903-1991)と同大学医学史教授Charles Donald O’Malley(1907-1970)による“THE ILLUSTRATIONS FROM THE WORK OF ANDREAS VESALIUS OF BRUSSELS(ブリュッセルのアンドレアス・ヴェサリウスの書籍からのイラストレーション)。現代解剖学の父とされるAndreas Vesalius(1514-1564)による解剖学書“De Humani Corporis Fabrica”(1543)とその簡易版“Epitome”を編纂した書籍である。原著は医学の金字塔的書籍で、訳者も医学者であるが、販売元のDover PublicationsはAnatomy for Artistsの書籍として販売している。
 美術書としても通用するこの図版はルネサンス時代に描かれた木版画で、形態に沿った描写は現代の解剖図よりも立体感において優れている。
(リプリント版、筆者蔵)

2015/06/12

Rex Vicat Cole “THE ARTISTIC ANATOMY OF TREES”(1920)



Rex Vicat Cole “THE ARTISTIC ANATOMY OF TREES” 347p, Seeley Service & Co., London, 1920

イギリスの風景画家Rex Vicat Cole(1870-1940)による“THE ARTISTIC ANATOMY OF TREES(樹木の美術解剖)。本書は植物学と美術(主に絵画表現)を結びつけた内容で、美術解剖の一つと位置付けられた変わり種の書籍である。主に樹木に関する描き方やそのポイントが、多数のスケッチによって解説されている。風景画における樹木の描写のポイント、陰影、枝から葉を伸ばす方向、枝が作る曲線、葉の葉脈、若葉の開き方、風景画の名作に描かれた植物の解析など、人体の美術解剖と同様に、植物を把握して美術作品を制作するための情報が掲載されている。
(ウェブアーカイブ版)

Robert Beverly Hale / Terence Coyle “ALBINUS ON ANATOMY (1st edition)” (1979)


Robert Beverly Hale / Terence Coyle “ALBINUS ON ANATOMY (1st edition)” 208pp, Watson-Guptill, New York, 1979

アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークのHaleとCoyleによる “ALBINUS ON ANATOMY”の初版。ハードカバーであるのと、書籍情報とCoyleの序文を除き、ページ数もレイアウトも現行版と同様の仕様になっている。編集はBonnie Sillverstein、デザイナーはBob Fillie、制作はHactor Campbell。
 TABULAE SCELETI ET MUSCULORUM CORPORIS HUMANI”(1747)はニューヨーク医科大学のMalloch Rare Book and History Roomの蔵書を用いたようである。ここにはAndreas Vesalius(1514-1564)の“De Humani Corporis Fabrica(ファブリカ)(1543)や、William Harvey(1578-1657)の“Exercitiatio Anatomica de Motu Cordis et Sanguins in Animalibus(心臓の働きと血液の流れ)”(1628)も蔵書されている。
 本書に使われた書体は、デザインの分野ではおなじみのBaskerville。ちなみにBeskerville書体を作ったJohn Baskerville(1706-1775)はWilliam Hunter(1718-1783)の “Anatomy of the Human Gravid Uterus Exhibited in Figures(ヒトの妊娠子宮解剖図譜)”(1774)のデザインを行っている。
(初版、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

2015/06/11

“The Human Figure: A Source Book for Artists and Designers” (2008)


“The Human Figure: A Source Book for Artists and Designers” 216pp, The Pepin Press, Amsterdam, 2008

2008年にオランダのThe Pepin Pressより出版された“The Human Figure: A Source Book for Artists and Designers”。編集はPepin van Roojen。この出版社は芸術家やデザイナーのアイデアブックをCD-Rom付きで出版しており、内容はほぼ図版のみで学術的な要素は排除されている。掲載された図は引用元が掲載されておらず、筋や構造名を示すインデックスも取り除かれている。
 着衣の人物図やプロポーション図、ポーズ集などの人体描写のための図版の他に解剖図も含む。1769, 1768, 1773, 1775, 1777, 1849, 1850, 1879, 1886年の順で出版された資料が掲載されている。筆者が確認した解剖図は、1849年の資料がFauによるATLAS DE L’ANATOMIE DES FORMES DU CORPS HUMAIN A L’USAGE DES PEINTERS ET DES SCULPTURES”(1845)の英訳版(1849)1879年の資料がドイツの解剖学者August von Froiep(1849-1917)によるAnatomie für Künstler. Kurzgefasstes Lehrbuch der Anatomie, Mechanik, Mimik und Proportionslehre des menschlichen Körpers”(1880)、1886年の資料が、ドイツの解剖学者、彫刻家Christoph RothによるPlastish-Anatomisher Atlas zum studium des Modells und der Antike”(1870)の第2版(1886)*1。1879の資料ではドイツの彫刻家Johann Gottfried Schadow(1764-1850)によるPOLICRET: ODER VON DEN MAASSEN DES MENSCHEN NACH GESCHLECHT UND ALTER”(1834)からの抜粋も見られる。
(初版、筆者蔵)

追記:
1769年の資料、Carlo Cesio: Anatomia dei pittori. Roma, 1679
1775年の資料、Johann Daniel Preissler: Gründlich Verfasse Regeln. 1750


*1:『美術解剖雑誌Vol.16 No.1』島田和幸・青柳路子・小松佳代子・宮永美知代「森林太郎の書中に紹介されたドイツの美術解剖書」pp.71-72, 2010

2015/06/10

Robert Beverly Hale / Terence Coyle “ALBINUS ON ANATOMY” (1988)



Robert Beverly Hale / Terence Coyle “ALBINUS ON ANATOMY” 208pp, Dover, New York, 1988

アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークの講師Hale(1901-1985)と、同じくアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークの講師Terence Coyle(1925-)による“ALBINUS ON ANATOMY”。Coyleは1974年以来リーグで講師を続けている。本書はWatson-Guptill社より1979年に出版された“ALBINUS ON ANATOMY”のリプリント版で、Haleの没後にDover Publications社から出版するにあたって序文をCoyleが書いた。原著は、オランダの解剖学者Bernhard Siegfried Albinus(1697-1770)が1747年に出版した大型書のTablae sceleti et musculorum corps humani”である。銅版画はJan Wandelaar(1690-1759)が描いた。18世紀の医学書であるが、美術講師が翻訳し、美術系の出版社からの出版のため、美術解剖書として掲載した。
 単一の筋を示した図のレイアウトが原著から変更されているのと、胸郭や骨盤など単一の図がないものは、全体図から拡大して説明の補助に用いている。拡大した図ではWandelaarの極めて高度な銅版技術がよく観察できる。
(リプリント版、筆者蔵)

Human proportion by Gottfried Bammes


Human proportion by Gottfried Bammes

ドイツの解剖学者Bammesによるプロポーション図。この図は書籍の表紙に箔押しされた図で、本文中には出てこない。8頭身プロポーションであるが、骨格の省略が興味深い。
  頭部の高さを1とし、鎖骨はその半分の高さを下った位置に水平に伸び、胸郭は外縁と剣状突起付近の一部のみが描かれている。肩関節の上腕骨頭と股関節の大腿骨頭は球になっている。肘関節は内側に上腕骨滑車と外側に上腕骨小頭が描かれ、前腕には橈骨頭から尺骨頭にかけて回内・回外の軸が描かれている。橈骨頭は手根骨と直接関節しないため、手根の位置が橈側にある。前腕に運搬角と大腿に頸体角が描かれ、大腿骨の大転子も見られる。骨盤は腸骨稜と上前腸骨棘、骨盤下口が描かれている。膝関節は水平線で描かれ、脛骨粗面や体表に近い形状が描かれている。
 単純化して説明する際に肝要な部分が多く含まれた図で、美術解剖の教育にも有効であろう。
(筆者模写)

2015/06/09

Proportion of human head by Gottfried Bammes


Proportion of human head by Gottfried Bammes

ドイツの解剖学者Bammesによる頭部のプロポーション図。側面観と正面観のに種類の図がある。脳頭蓋と顔面頭蓋に分けているのが特徴で、側面観の図では楕円形の脳頭蓋が印象的である。フランクフルト平面は設定されていない。プロポーションに骨格を含むのは美術解剖ならではの見方であろう。
 オリジナルの図は頭蓋骨がグレーのベタ塗りでシルエットになっており、頭蓋のシルエットに重なる目鼻口は白で描かれている。
(筆者模写)

2015/06/08

Wilhelm Ellenberger, Hermann Dittrich, Hermann Baum “AN ATLAS OF ANIMAL ANATOMY FOR ARTISTS” (1956)



Wilhelm Ellenberger, Hermann Dittrich, Hermann Baum “AN ATLAS OF ANIMAL ANATOMY FOR ARTISTS” 151pp, Dover, New York, 1956

ドイツの動物解剖学者のWilhelm Ellenberger(1848-1929)、同じくドイツの動物解剖学者のHermann Baum(1864-1932)による動物解剖学書を編纂した“AN ATLAS OF ANIMAL ANATOMY FOR ARTISTS”。リプリント版(英訳版)の編集はアメリカ自然史博物館のLewis S. Brownによる。EllenbergerとBaumはドイツの近代動物解剖学の始祖とされる。図版はメディカルイラストレーターのHermann Dittrichが描いた。元々はそれぞれの動物ごとに出版された書籍であったが、リプリント版の出版に当たって一冊にまとめられた。原著は巻末に記載されている。
 掲載されている動物は、馬(サラブレッド)、犬(ラブラドール・レトリバー)、ライオン(雌)、牛(雌牛、雄牛)、鹿(シカ、ノロジカ、ヤギ)の解剖図のほかに、付録としてイギリスの画家George Stubbs(1724-1806)による馬、フランスの動物学者Hercule Strauss-Durkheim(1790-1865)による猫、フランスの動物学者Georges Cuvier(1769-1832)による猿、アザラシ、兎、カンガルー、リス、コウモリの解剖図が掲載されている。
 リトグラフによる図版は極めて緻密で美しく、写真と見紛うほどである。真正面、真後ろからの難しい視点のみならず、真上からの視点で描かれている図もある。
 現行版の表紙にはなぜかStubbsの解剖図が使用されている。
(リプリント版、筆者蔵)

2015/06/03

Paul Richer “Nouvelle Anatomie artistique LES ANIMAUX I Le Cheval” (1910)



Paul Richer “Nouvelle Anatomie artistique LES ANIMAUX I Le Cheval” 67pp, LIBRAIRIE PLON, Paris, 1910

フランスの解剖学者Richer(1849-1933)による“Nouvelle Anatomie artistique LES ANIMAUX I Le Cheval(新しい美術解剖 動物1 馬)。「美術のための解剖学」には、人体解剖学の他に動物解剖学がある。動物の解剖学には、人体をより深く理解するための比較解剖学と、動物の形状を製作するための目的があるが、本書は本書は頭蓋を除いて馬の構造に焦点が当てられているため、後者的な意味合いが強い。騎馬像など馬は美術史で最も多く登場する動物の一つで、解剖学的な内容の需要も高い。
 内容はRicherの人体に関する書籍と比べて概説的であるが、関節の内部構造、品種による頸部や胴体の差異、蹄の形状、脚のバリエーションなど形態のポイントが多数示されている。巻末にはEdweard Muybridge(1830-1904)の連続写真を彷彿させる図もある。
 Richerはしばしば写真をトレースして図版や模型を作成した。写真をそのまま用いず、図に置き換えるのは、この時代の文字と写真を同一のページに配置した書籍によく見られる。
(初版、筆者蔵)

other volumes: IIIIIIIVVVIAnimaux

2015/06/02

George B. Bridgman / Ben Pinchot “Drawing the Female Form” (2005)


George B. Bridgman / Ben Pinchot “Drawing the Female Form” 64pp, Dover, New York, 2005

アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークの講師であったBridgmanとアメリカの写真家Ben Pinchot(1890-1986)による“Drawing the Female Form”。原題は“Female form”(1935)でPinchotが第一著者となっている。
 本書はPinchotによる裸体写真と、それに基づくBridgmanによる構造的な素描が掲載されている。テキストはPinchotによる導入文の2ページのみで、その後は見開きで写真と素描が淡々と掲載されていく。素描は要点を描いたり部分的であるが、写真とともに掲載されることによって、読者が形を探したり、見比べる効果がある。
 モデルはアメリカ人ダンサーのDesha Delteil(1899-1980)とJean Myrio。Desha Delteilは美術モデルとしても有名であった。
(リプリント版、筆者蔵)

2015/06/01

Paul Richer “Nouvelle Anatomie artistique VI_Le nu dans l’Art_L’ Art Chrétien” (1929)




Paul Richer “Nouvelle Anatomie artistique VI cours supérieur (Suite) Le nu dans l’Art L’ Art Chrétien Depuis les origines jusqu’à la Renaissance” 253pp, LIBRAIRIE PLON, Paris, 1929

フランスの解剖学者Richer(1849-1933)による “Nouvelle Anatomie artistique VI cours supérieur (Suite) Le nu dans l’Art L’ Art Chrétien Depuis les origines jusqu’à la Renaissance (新しい美術解剖 第6巻 芸術の中のヌード キリスト教美術 その起源からルネサンスまで)”。本書はRicherがボザール退官後(就任1903-1922)に手がけた最晩年の美術解剖書になる。
 古代ローマ時代の壁画から、初期ルネサンスまでのキリスト教美術における人体表現を解析した内容になっている。ローマ美術、ビザンチン美術、ゴシック美術、初期ルネサンスの有名作の図版と解説が並ぶ。それぞれ身体の露出している箇所は少ないため、美術解剖というよりは、芸術学的な趣がある。「動作の姿勢」という項目では有名なVillard de Honnecourt(wiki)による姿勢の概念図が掲載されている。
 Nouvelle Anatomy artistiqueシリーズは本書が最後になっており、この後の時代のレオナルドやミケランジェロの研究が残らなかったのは残念である。
(初版・筆者蔵)

other volumes: IIIIIIIVVVIAnimaux