2015/04/30

Julien Fau "HUMAN ANATOMY FOR ARTISTS A NEW EDITION OF THE 1849 CLASSIC" (2009)



Julien Fau "HUMAN ANATOMY FOR ARTISTS A NEW EDITION OF THE 1849 CLASSIC" 110PP, Dover, New York, 2009


フランス人解剖学者のJulien Fau(1811-1880)による「人体の形状の解剖学アトラス」の英訳リプリント版。オリジナルは"Atlas de L'Anatomie des Formes du Corps Humain A L'usage des Peinters et des Sculptures"(1845)で、その後、Robert Knoxによって英訳版"The Anatomy  of External Forms of Man, intended for the use of Artists, Painters and Sculptures by Doctor J. Fau Atlas"(1848)が出版された。リプリント版が多数出ているが、カラー版はオリジナルの仏語版から、モノクロ版は英語訳版からの複写である。(*1)
 Fauの図譜は美術解剖において最も詳細な図譜の一つで、リトグラフ特有の密度のある描写になっている。局所的な骨学、筋学に加え、一部正中神経や上腕動脈など体表に近い神経・脈管が描かれ、巻末には古代ギリシャの有名作のスーパーインポーズによるエコルシェ図などが描かれている。英語訳版で加えられた「ディスコボロス」と「ボルゲーゼの剣闘士」のエコルシェ、その後の巻末に付けられたプロポーション図など2ページは、それ以前の解剖図と絵のタッチが違う。英語版は初版と第二版で女性の全身図が改訂され、より自然な姿勢になっているが、本書では図版が改訂前のため、複写に初版が用いられたことがわかる。
(リプリント版、筆者蔵)


*1:『美術解剖学雑誌 11号』pp.50-51, 2007 宮永美知代、島田和幸「河鍋暁斎の解剖図と描画としての骸骨図」

2015/04/28

John S. Barrington "ANTHROPOMETRY AND ANATOMY" (1953)



John S. Barrington "ANTHROPOMETRY AND ANATOMY" 112pp, ENCYCLOPAEDIC PRESS, London, 1953

ジョン・S・バリントンによる「人体計測と解剖学」。バリントンは英国の裸体写真家。本書は写真表現で美術解剖書を試みた内容になっており、ミケランジェロのダヴィデなど有名彫刻と同様のポーズをとったモデルの写真などが多数掲載されている。筋骨格の解剖学的内容の他に人体計測が主になっており、写真上の体表のランドマークから人体のプロポーションを計測している。オリジナルの解剖図は簡易で、トムソンやリッシェなど他の書籍からの引用が見られる。
(第3版、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

William Rimmer "ART ANATOMY" (1962)



William Rimmer "ART ANATOMY" 153pp, Dover, New York, 1962

ウィリアム・リマー(1816-1879)による「美術解剖」(オリジナルは1877年出版)。リマーはイギリス生まれの画家、彫刻家、解剖学者(リプリント版にはM.D.表記あり)。ニューヨークのクーパー・ユニオンで女性のためのデザイン学校の教授を勤めた。掲載された図の多くはリマーによるオリジナルだが、全身骨格はファウからの引用が見られる。筋骨格図は実際の解剖体を観察した情報が含まれているのと、起伏に強いこだわりがあるのか、図は実際の人体よりも起伏が強調され、それだけではなく起伏を示すために前腕などにリング状の横線が描き込まれている。見方も美術的で、上肢の筋をバラバラに描いている図など解剖学では見られないアプローチをしている。前腕の前腕の筋は筋どうしが癒合しているため、図のように分割出来たかは不明。リマーのクセのある図はデューラーや、ルネサンス後期の素描を彷彿させる。
(リプリント版、筆写蔵)

2015/04/27

John Raynes "Human Anatomy for the Artist" (1979)




John Raynes "Human Anatomy for the Artist" 192pp, Cresent books, New York, 1979

ジョン・レインズ(1929-)による「芸術家のための人体解剖学」。レインズはイギリスの画家、美術教師。本人によるスーパーインポーズの筋肉図や骨標本のスケッチ、人体素描などが掲載されている。鉛筆による素早いストロークの素描や、ペンによる点描など表現の強い解剖図になっており、解剖学と人体素描の描画法を合わせたような内容になっている。なかでも点描による骨格図の試みは解剖図としても珍しい試みだろう。巻末には写実的な彫刻や絵画の有名作を掲載している。
(初版、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

Walter Farrington Moses "ARTISTIC ANATOMY Plus a Portfolio Drawings of Old and Modern Masters" (1939)




Walter Farrington Moses "ARTISTIC ANATOMY Plus a Portfolio Drawings of Old and Modern Masters" 151pp, Borden, California, 1939

ウォルター・ファリントン・モセス(1874-1947)による「美術解剖」。モセスはアメリカの風景画家、シカゴのファッションイラストレーション学校で講師を勤めた。図版のほとんどはリッシェとトムソンからの引用で、いくつかの全身図は新たに描き起こされたものであるが、女性の全身図は脂肪層を考慮していないため、腰部の筋が発達した状態に描かれている。巻末にはルネサンスから近代までの画家による素描が追加されている。
(ペーパーバック版、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

2015/04/24

Brune Hogarth "DYNAMIC ANATOMY" (1958)



Brune Hogarth "DYNAMIC ANATOMY" 232pp, Watson-Guptill, New York, 1958

バーン・ホガース(1911-1996)による「動的解剖学」。ホガースはアメリカの漫画家、美術教育者。代表作に「ターザン」がある。本書の冒頭はヴェサリウス「ファブリカ」の紹介から始まり、西洋美術における時代様式の概説を行っている。その後に掲載された解剖図はホガース流に描かれ、筆勢による流線型と起伏の陰影によって表現されている。図の多くは浅層の筋で、骨に関しては手や下肢の関節などを除いてほとんど描かれていない。内部構造をボリュームに置き換えて把握する手法はブリッジマンと似ている。日本でも漫画家のための美術解剖書が出版されているが、「アクセスしにくいけれど需要のある情報」を上手く収集し、咀嚼して供給する点は美術解剖書のあり方として参考になる。
(第9版、1978、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

2015/04/23

Edouard Lanteri "Modelling and Sculpture A Guide for Artists and Students vol.III" (1965)



Edouard Lanteri "Modelling and Sculpture A Guide for Artists and Students volume III" 233pp, Dover, New York, 1965

ランテリによる「モデリング 教師と学生のための手引き」の第3巻。この巻の謝辞はオーギュスト・ロダンが書いている。内容は塑像的な技術が中心だが、アングルの作り方や型取りの方法のあいまに動物解剖学が紹介されている。モデルには馬、ライオン、牛といった造形的需要の高い動物が選ばれ、骨格と表層の筋が外形のシルエットとともに図示されている(馬のみエコルシェ像を制作)。解剖図はエレンバーガーのトレースの他、いくつかはランテリによる塑像の写真から描き起こされた。ライオンや牛の像は、門や建物の入り口など、二対一組で制作されることが多いためか、左右を反転させた図が掲載されている。
(リプリント版、筆写蔵)

2015/04/22

Edouard Lanteri "Modeling A GUIDE FOR TEACHERS AND STUDENTS" (1902)




Edouard Lanteri "Modeling A GUIDE FOR TEACHERS AND STUDENTS" 153pp, CHAPMAN & HALL, London, 1902

エドワード・ランテリ(1848-1917)による「モデリング 教師と学生のための手引き」。ランテリは彫刻家、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのモデリングコースで教鞭を執った。本書は人体塑像の教本であるが、体表の形状や解剖学的構造を含む。塑像のプロセス写真と図によって記述を図示していく。まず頭部から解説し、ミケランジェロのダヴィデ象に基づく顔パーツの石膏像や頭蓋骨の模刻を示し、その後、肖像を制作するステップへ向かう。最後に全身像をモデリングしていくが、この時に解剖学的構造について解説を行っている。本書の最後に掲載されたエコルシェ(筋肉人模型)は型取りされ、教材として普及した。
(リプリント版、筆者蔵)

2015/04/21

Reginald Marsh "ANATOMY FOR ARTISTS" (1970)




Reginald Marsh "ANATOMY FOR ARTISTS" 209pp, Dover, U.S., 1970

レジナルド・マーシュによる「芸術家のための解剖学」。マーシュはアメリカの画家、アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークでジョン・スローンの元で学んだ。本書は、画家が制作を行う前の取材といった内容で、描いて覚えたメモのような図が掲載されている。レオナルド、ミケランジェロなど様々な巨匠の解剖図も含み、参照元が書いてあるので、ソースを辿れるようになっている。中でもヴェサリウス『ファブリカ』の解剖図の模写は密度が高い。解剖図としては十分ではないが、芸術家の古典から学ぶ姿勢が伺える。
(リプリント版、東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

Édouard Cuyer "Anatomie plastique" (1913?)



Édouard Cuyer "Anatomie plastique" 349pp, OCTAVE DOIN, Paris, 1913?


画家、彫刻家のÉdouard Cuyer(1852-1909)による"Anatomie Plastique(美術解剖)"。Cuyerはパリ市の学校で美術解剖の教授を務め、エコール・デ・ボザールではDuvalの元でアシスタントを務めた。Duvalによって1881年に出版された"PRÉCIS D'ANATOMIE A L'USAGE DES ARTISTES(芸術家のための解剖学)"ではボルゲーゼの闘士の骨格図やDuchennneの写真に基づく図など数点を描いている。
 本書はENCYCLOPÉDIE SCIENTIFIQUE, D'ANATOMIE ET EMBRYOLOGIEの第3巻としてフランスのOCTAVE DOIN社から出版された。図版はCuyerによるオリジナルのもので、人体、動物、性差、人種差、表情など多岐にわたる。クマの骨格とヒトの骨格を同じ姿勢で比較した図など印象的である。
(1913年版、出版年が没後のため初版年不明、筆者蔵)

2015/04/20

Philippe Comer "UNE REÇON D'ANATOMIE Figures du corps À L'ÉCOLE DES BEAUX-ARTS" (2008)




Philippe Comer  "UNE REÇON D'ANATOMIE Figures du corps À L'ÉCOLE DES BEAUX-ARTS" 511pp, Beaux-arts de Paris les éditions, Paris, 2008

パリ、エコール・デ・ボザールの形態学(旧解剖学)の教授、Philippe Comer(1955-)編集による「ボザールにおける人体図の解剖学講義」。本書は2008年にボザールで開催された同展のカタログである。ヴェサリウスのファブリカなどの医学書や、エコルシェなどの解剖模型、講義風景の写真資料などボザールの美術解剖が関与した膨大な資料が年代を追って掲載されている。資料を眺めるだけでも充実した内容になっており、これまでの美術解剖を俯瞰する良き資料と言える。巻末にはボザールで教鞭を執った講師陣が年代順に書かれており、古くはボザール開校の1648年、François Quatroulx(1593-1672)の時代にまでさかのぼる。美術のための解剖学が盛んだった学校はフランスのエコール・デ・ボザール、イギリスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(1769年開校)、アメリカのアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨーク(1875年開校)などがあげられるが、最も長い歴史を持つのはボザールということになる。
(筆写蔵)

2015/04/19

Paul Richer / Robert Beverly Hale "Artistic Anatomy" (1971)


Paul Richer / Robert Beverly Hale "Artistic Anatomy" 256pp, Watson-Guptill, U.S., 1971

ロバート・ビバリー・ヘイル(1901-1985)によるリッシェの「美術のための解剖学 人体の外形と解説」の英訳版。ヘイルはアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークで教鞭を執った有名講師。ヘイルの授業は映像として記録されており、YouTubeなどでもモノクロの映像が視聴出来る。本書を翻訳した際、リッシェが外形に影響するとして図示した「大腿筋膜の肥厚部」を「Richer's band」と翻訳している。おびただしい数の増刷がなされており、本書が広く普及したことが伺える。なかでもテキストまで翻訳した功績は大きい。日本でも柳亮がリッシェの仏語版を訳したが、テキストパートは含まず、かわりに独自の日本語解説を添えた。柳版の解説は解剖学的情報を淡々と記述したものであるが、オリジナル版ではボリュームなどの形態的な記述も行われていた。


2015/04/17

Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique V Le nu dans l'Art : L'Art Grec" (1926)




Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique V Le nu dans l'Art : L'Art Grec" 414pp, PLON, Paris, 1926

リッシェによる「新しい美術解剖第5巻 美術におけるヌード ギリシャ」。エジプトに引き続き、エーゲ文明からヘレニズムまでの古代ギリシャ美術の形態解析をまとめた一冊。作品の写真だけでなく、ボザール所蔵の石膏像コレクションの写真や、ルネサンスなど後世の引用も記載されている。ギリシャ彫刻は美術解剖において、構造を理解するためのモデルとしてたびたび登場するが、本書では古代ギリシャ時代を通史として取り扱っているため、モデルとしての古典作品引用とはおもむきが異なる。
(初版、筆者蔵)

other volumes: IIIIIIIVVVIAnimaux

2015/04/16

Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique IV Le nu dans l'Art : Égypte - Chaldée - Assyrie" (1925)




Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique IV Le nu dans l'Art : Égypte - Chaldée - Assyrie" 359pp, PLON, Paris, 1925

リッシェによる「新しい美術解剖第4巻 美術におけるヌード エジプト―バビロニア―アッシリア」。古代エジプトなどの壁画や彫刻に表現された人体の構造について解析していく。古代作品において身体が露出した部分には、その時代の美術様式に則って人体の構造がうつしとられている。様式を通して見る構造が一体何を表したものかを、リッシェによるスケッチと解剖学的知見を交えてひもといていく試み。今日の美術解剖学に通じるアプローチである。
(初版、筆写蔵)

other volumes: IIIIIIIVVVIAnimaux

2015/04/14

Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique II Morphologie La Femme" (1920)




Paul Richer "Nouvelle Anatomie Artistique II Morphologie La Femme" 387pp,  PLON, Paris, 1920

リッシェ「新しい美術解剖第2巻 女性の形態学」。解剖図はその多くが男性をモデルにしているため、女性の形態学的構造を示す試みは珍しい。多くの素描が掲載され、巻末にはリッシェ制作の彫刻 "Tres In Una" (1913)のコロタイプ写真が掲載されている。解剖学書では性差に関して胸部や骨盤部など部分的に掲載するケースが多い。本書では男女の形態や構造を比較することでその差を明らかにしていく試み。全身をくまなく制作する美術表現ならではの内容となっている。
(初版、筆者蔵)

Paul Richer "Parts of the body having a common measurement" (1893)


Illustration from Paul Richer "Parts of the body having a common measurement"

この部分図は、頭部と他の部分の比例関係を示したもので、「キャノン 人体のプロポーション」(1893)に掲載された。初出の「美術解剖」(1890)のころと比べて部位が要約されて簡素になっている。頭頂からオトガイまでを1とし、上から、半分から1.5倍の高さを持つ部位の図、2倍の高さをもつ部位の図、3倍から4倍の高さを持つ部位の図となっている。つま先や肩幅など、無理に枠に収めていない箇所もある。

Paul Richer "CANON DES PROPORTIONS DU CORPS HUMAIN" (1893)

2015/04/13

Paul Licher "Proportions moyennes de l'homme" (1915)




リッシェによる標準男性のプロポーション。この図は「新しい美術解剖 第2巻 女性の形態学」において女性のプロポーションと比較するために掲載された。骨学のパートに含まれているため図の解説に骨の記載があるが、点線で描かれていた骨は省略されている。以下解説の訳と本文。意味がよく汲み取れない箇所は括弧で加筆した。

「平均男性のプロポーション
 身長は頭の7.5倍の高さで構成される。
(頭部の)2等分の水平線は目頭を通る。
 体幹は、頭頂から臀裂まで4倍の高さ。
 また下肢は、地面から深部の股関節に対応する鼠径部のラインの途中で4倍分。
 体の中心は、臓器の道筋に従って、恥骨の下部に位置する。
 ほとんどの上肢は3.5倍の長さは持っていない。
 (肩幅は、肩から)腰までの高さよりも大きい。
 次は等式に落とし込める:
 上肢。肩峰から第三中手骨の距離は、肘頭窩の上縁または同等の高さで半分に分けられる。
 下肢。(上前)腸骨棘から地面までの距離は膝蓋骨の中心で2等分出来る。」

Proportions moyennes de l'homme.
La tête est comprise 7 fois 1/2 dans la hauteur du corps.
Une horizontale passant par l'angle interne des yeux la divise en deux parties égales.
Le tronc mesure 4 hauteurs de tête, du vertex au pli fessier.
Le membre inférieur mesure également 4 têtes, du sol au milieu du pli de l'aine correspondant, dans la profondeur, à l'articulation de la hanche.
Le milieu du corps est situé au-dessous du pubis, à la racine des organes.
Le membre supérieur ne compte pas tout à fait 3 têtes 1/2.
La grande envergure dépasse la hauteur de la taille.
On relève aux membres les égalités suivantes :
Au membre supérieur. la distance qui s'étend du dessus de l'acromion au-dessous de la tête du 3e métacarpien est divisée en deux parties égales par le sommet de l'olécrane ou la fossette condylienne située au même niveau.
Au membre inférieur, le centre de la rotule divise en deux parties égales la distance qui s'étend du sol à l'épine iliaque.

2015/04/12

Paul Richer "8heads Canon" (1893)


Illustration from Paul Licher "8heads Canon (Heroic Type)" 1893


リッシェによる8頭身キャノン。8等分や方眼のマス目に人体を当てはめるのは古典的プロポーションで、これを「英雄型」としている。リッシェと言えば平均的な7.5頭身のキャノンがよく知られており、このような8頭身プロポーションは珍しい。一旦平均プロポーションの充実した体つきに見慣れてしまうと、異様に頭部が小さく、四肢が長く、全体として細長い体型をしている。

ガイドと各部位の一致は以下の通り

頭頂からオトガイまでを1
頭部の半分の高さに目頭
頭頂から胸の高さまで2
頭頂から臍まで3
頭頂から会陰部まで4
地面から脛骨粗面の上縁まで2
正中から90°外転させた上肢の指先まで4
肘関節はその半分
下方におろした外転位の指先から肩鎖関節まで3.5
指先から肘頭の上縁まで2
肘関節と臍の高さはほぼ同じ


Paul Licher "CANON DES PROPORTIONS DU CORPS HUMAIN"  pt VIII, 1893

Paul Richer "7.5heads Canon" (1890, 1893)


Illustration from Paul Richer "7.5heads Canon (Average Type)" 1890, 1893

Paul Licher "CANON DES PROPORTIONS DU CORPS HUMAIN" pt IV, V, VI, 1893

2015/04/11

Stephen Rogers Peck "Atlas of Human Anatomy for the Artist" (1951)




Stephen Rogers Peck "Atlas of Human Anatomy for the Artist" 272pp, Oxford University Press, New York, 1951

ペック(1912-1988)による「芸術家のための美術解剖アトラス」。ペックはアメリカの画家、美術解剖学者。シラキュース大学の美術学部で訓練を積んだ。写真を元にしたアクリルの図は大まかな形態が把握できる。骨の図はオリジナルで、友人の骨学者Derwin L. Plattの協力によって選別された標本を用いている。トムソンを彷彿させる写真は、写真家のJohn Seymour Erwinによる。全身骨格図はトムソン、筋肉図はリッシェ、解剖図の合間に挿入された素描はブリッジマンの引用が見られる。素描はひとつひとつ注目すると形態把握のポイントを描いている。当時までの美術解剖書を編纂したような内容。
(ペーパーバック版、筆写蔵)

2015/04/10

Julius Kollmann "PLASTISCHE ANATOMIE DES MENSCHLICHEN KÖRPERS" (1886)



Julius Kollmann "PLASTISCHE ANATOMIE DES MENSCHLICHEN KÖRPERS" 624pp,  VERLAG VON VEIT & COMP, Leipzig, 1886

コールマンによる解剖書「美術解剖と人体」。コールマンはバーゼル大の解剖学の教授であった。骨学、筋学、体表解剖、古代やルネサンス作品の解析、体表の写真図版など網羅的に紹介されている。女性骨格図は、サミュエル・トーマス・フォン・ゼンメリングの「女性骨格図」を元にしている。古代作品ではボルゲーゼの闘士像を引用し、ルネサンス作品ではミケランジェロの図を引用している。系統だった解説ではないのと図が様々で重複している箇所があるため、理路整然とは言いがたいが非常にボリュームがある。なかでもX.A.V.E. SINGERのサインが入った図は見ごたえがある。この図は後にシーダーが引用した。
 日本では、東京美術学校時代に森鴎外が本書を手本として美術解剖を教えたとされる。本書はドイツの美術解剖を知る資料として貴重である。
(東京芸術大学美術解剖学研究室蔵)

2015/04/09

Paul Richer "ANATOMIE ARTISTIQUE DESCRIPTION FORMES EXTÉRIEURES DU CORPS HUMAIN" (1890)






Paul Richer "ANATOMIE ARTISTIQUE DESCRIPTION FORMES EXTÉRIEURES DU CORPS HUMAIN"  270pp, PLON, Paris, 1890

リッシェによる大著「美術解剖 人体の外形の解説」。ポール・リッシェ(Paul Marie Louis Pierre Richer, 1849-1933)は彫刻家、版画家、解剖学者。パリのエコール・デ・ボザールで教鞭を執った。近代以降現代までの美術解剖書の多くが本書を手本としている。長辺が35cmを超える大型のアトラスで、テキストと図版の2部パートからなり、1ページづつ紙葉として分かれている。骨学、筋学、体表、運動、プロポーションの順で網羅的に記述されている。図は解剖学的正位が描かれ、立体的な構造と位置関係の把握を補助するために正面、側面、背面の3面図を掲示し、さらに局所と全体が繋がるように計画されている。解剖図としても精確で、隅々まで見ても新しい発見が得られる。この綿密な図は写真を元にして描かれたが、トレースではなく形態の調整がなされている。本書は日本の美術解剖にも大きな影響を与え、今日でも東京藝術大学の美術解剖学の授業に使用されている。
(初版、筆写蔵)

2015/04/08

Paul Richer "NOUVELLE ANATOMIE ARTISTIQUE DU CORPS HUMAIN - CORPS PRATIQUE ÉLÉMENTAIRE" (1906)



Paul Richer "NOUVELLE ANATOMIE ARTISTIQUE DU CORPS HUMAIN - CORPS PRATIQUE ÉLÉMENTAIRE" 179pp, PLON, Paris, 1906

リッシェによる「人体の新しい美術解剖 体の基礎練習」。本書は1890年に出版された"Anatomie Artistique"に新たな解剖学的情報を加筆して編纂したもの。全6巻の第1巻。アトラスではなく教科書である。単離した筋とその厚み、断面の構造などが何気なく図示されているが、こうした筋の立体的情報は医学書でもなかなか見当たらない。リッシェはボザールの教壇上で実際に解剖をして講義を行っていたことが図として残っており、同時代にボザールへ留学した黒田清輝の記録からも実際に解剖体を授業に用いていたことが知られる。本書にはそうした経験から得られた形態学的な研究とアイデアが伺える。
(著者蔵)


other volumes: IIIIIIIVVVIAnimaux

Mathias Duval / Édouard Cuyer "HISTOIRE de l'Anatomie plastique" (1893)

Mathias Duval / Édouard Cuyer "HISTOIRE de l'Anatomie plastique" 351pp, L'ENSEIGNEMENT DES BEAUX-ARTS, 1893

デュヴァルとCuyerによる「美術解剖の歴史」。Cuyerは動物解剖の著作を残した。内容はミケランジェロやレオナルド、ラファエロなどのルネサンスの素描と解剖風景から始まり、ヴェサリウス、アルビヌスなど解剖図譜も掲載されている。美術解剖が解剖学と平行した歴史として編纂され、最も新しいものではファウの解剖図譜、コードロンのエコルシェが掲載されている。Bertinattiなど今日ではアクセスしにくい図譜の掲載もあり、充実した内容となっている。
(筆写蔵)

2015/04/07

Matias Duval / Frederic E. Fenton "ARTISTIC ANATOMY" (1884)



Matias Duval / Frederic E. Fenton "ARTISTIC ANATOMY" 324pp, CASSEL and COMPANY, London, 1884

フランスの解剖学者Matias Duval (1844-1907)による「美術解剖」の英訳版。訳者のFentonはロンドン医師協会の研究者。編集にはロイヤルカレッジの校長を勤めたSparkesが関わっている。本書はロンドンのCASSEL and COMPANYから1884年に出版された。
 内容は骨学、筋学、表情に分けられ、骨学と筋学は体幹、上肢、下肢、頭部という順で、医学書的な順序を踏襲する。全身図はアシスタントのCuyerによるもので、ボザールに収蔵されたボルゲーゼの闘士のエコルシェ像(Salvage作、1804年)を元にしている。表情の項目はDuchenneによる1855-56年にかけて行われた研究「人間の表情のメカニズム」に基づいている。
 デュヴァルはリッシェの前任の教授で、本書は翻訳されて世界中に広まった。リッシェ以前の美術解剖を知る上で貴重な資料である。

Arthur Thomson "A HANDBOOK OF ANATOMY FOR ART STUDENTS" (1896)




Arthur Thomson "A HANDBOOK OF ANATOMY FOR ART STUDENTS" 415pp, Clarendon Press, Oxford, 1896

イギリスの解剖学者、人類学者Arthur Thomson(1858-1935)は、オックスフォード大学の人体解剖学の教授(1885-1933)Thomsonは水彩画の趣味を持っており、ロイヤルアカデミー(1900-1934)、ロイヤルカレッジ(前身のthe national art training school)でも解剖学の教鞭を執った。この"A HANDBOOK OF ANATOMY FOR STUDENTS"1896年にClarendon Pressより出版された。
 本書はトムソンの撮影による裸体写真とそれに基づく解剖図を多く掲載した美術解剖書である。様々なポーズをとったモデルの写真とその写真からスーパーインポーズで描き起こされた浅層の筋肉図によって、運動時の内部構造を可視化させている。この図や写真は後の時代にも流用され、需要があったことが伺える。内容にボリュームがあり、当時貴重であった写真をふんだんに使っている点で、並々ならぬ力の入れようが伺える。
(筆者蔵は第3, 450pp)

wiki: http://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Thomson_(anatomist)
book information: http://www.achtung.photography/arthur-thomson-handbook-of-anatomy-for-art-students-1896/

2015/04/06

Paul Licher "CANON DES PROPORTIONS DU CORPS HUMAIN" (1893)



Paul Licher "CANON DES PROPORTIONS DU CORPS HUMAIN"  96pp, LIBRAIRIE DELAGRAVE, Paris, 1893

リッシェによる人体のプロポーションをまとめた書籍。リッシェによる「標準人体像」とリッシェの代表作"Anatomie Artistisque"(1890)にも掲載されていた7.5頭身男性のプロポーション図、英雄型の8頭身像が描かれている。
(第4版、筆者蔵)

2015/04/05

Paul Richer: Statuette-étalon du corps humain (1893)




Paul Richer "Statuette-étalon du corps humain" 110.5 x 39 x 40cm, École des beaux-arts, 1892

リッシェ「標準人体像」に基づくイラストレーション。オリジナルの像は人体のプロポーションという2次元の概念図を3次元像として表現した教材である。姿勢は左半身が解剖学的正位、右半身は前方に90度屈側位を示す。左半身にプロポーションを示す分割線が引かれている。像は1892年に制作された後、写真撮影され、"Canon des Proportions du corps humain"(1893)の図版に用いられた。写真は立体的な把握を補助するために前面、分割線が引かれた左側面、後面の3面を掲載している。右足を乗せた土台の右側面には、人体の異なる部位の比例関係を示す図が線刻によって印されている。刻印の図は同書にも掲載された。

Compas de proportions (1893)

Paul Richer "Canon des Proportions du corps humain" Delagrave, Paris, 1893, p.94

比例コンパス。今日の日本の美術教育ではフリーハンドによる感覚的な形態を教えることが多いが、アカデミズムが教育の主流であった西洋では、彫刻や図に道具を用いて形態の精度を高めていた。

Paul Licher: Proportions moyennes de la femme - caractéristiques osseuses (1915)




Illustration from "UNE LEÇON D'ANATOMIE Figures du corps À L'ÉCOLE DES BEAUX-ARTS" Philippe Comar, Beaux-arts de Paris les éditions, p.355

Paul Richer: Proportions moyennes de la femme - caractéristiques osseuses, 40.3 x 30.7cm, 1915

リッシェによる「新しい美術解剖」の第2巻「女性の形態学」(*1)に用いられた一般的な女性のプロポーションを示す図である。図版の版下は、A3サイズほどの大きさの方眼紙に鉛筆で下書きをし、その上からペンで清書された。図が描かれたのは1915年で、その5年後の1920年に出版された。リッシェの他のプロポーション図に従って7.5頭身が用いられている。男性図と比べ、骨盤の幅の線が加えられている。像高は毛髪まで含み、まとめた髪が頭部の1/2上部に収まる。

*1: "Nouvelle anatomie aetistisque du corps humain, Morphologie - La Femme"

2015/04/04

Joseph Sheppard “A Complete Guide to Surface Anatomy: How Bones and Muscles Create the Forms of the Living Figure” (1984)



Joseph Sheppard “A Complete Guide to Surface Anatomy: How Bones and Muscles Create the Forms of the Living Figure” Watson-Guptill, New York, 1984
Sheppardによる美術解剖書の一つ。体表解剖学(Surface anatomy)を美術解剖に応用した。様々なポーズを取ったモデルの素描を元にスーパーインポーズ法を用いて表層の筋や骨格を図示している。図の情報量は素描向け。体表解剖学では、骨や筋の起伏など体表観察で得られる解剖学的情報をもとに深部の構造を推測する。生体は固定遺体とは異なるため、体表解剖やスーパーインポーズは生体の観察を必要とする表現の手引きとして有効である。
(リプリント版、著者蔵)

reprint edition: http://www.amazon.co.jp/Drawing-Living-Figure-Anatomy-Artists/dp/0486267237

Joseph Sheppard“ANATOMY A Complete Guide for Artists” (1975)



Joseph Sheppard“ANATOMY A Complete Guide for Artists” Watson-Guptill, New York, 1975
ジョセフ・シェパード(1930-)はアメリカの画家、教育者。画業の他にいくつか人体素描の教本を著している。教本の図版には人体の構造を示すための解剖図が含まれているが、医学の解剖図のように人体各部位を網羅する地図的なものではなく、素描において素早く形態を捉えるための簡略図となっている。解剖学的な情報量は少ないが、モデルの形態を短時間で捉えることに焦点を当てている点で、美術向けの解剖図と言える。主な美術解剖書に“ANATOMY A Complete Guide for Artists”1975、“A Complete Guide to Surface Anatomy: How Bones and Muscles Create the Forms of the Living Figure”1984、日本語の訳書「やさしい美術解剖図」がある。
(リプリント版、著者蔵)

reprint edition: http://www.amazon.co.jp/Anatomy-Complete-Guide-Artists-Dover/dp/0486272796

John Charles Lewis Sparkes "Manual of artistic anatomy for the use of students in art"(1888)


John Charles Lewis Sparkes“Manual of artistic anatomy for the use of students in art” Baillièle, London, 1888
スパークス(1833-1907)は英国出身の教育者。1881-1898にかけてロイヤルカレッジの学長を勤めた。本書は学長就任中に出版されている。図版はオリジナルの他に解剖書から引用されたものもある。筋学の図は有名なブールジェルの解剖図譜を元に描かれているため、図の情報量としては密度が高い。ブールジェルの図はリトグラフによる表現だが、本書ではハッチング表現で模写されている。リプリント版ではタイトルが改められ、“The Complete Guide to Artistic Anatomy”(2010)になっている。スパークスの著書は絵画や陶芸、彫刻と、美術教育の基礎に関係している。
(画像はリプリント版、筆写蔵)