2016/05/31

Victor Perard “ANATOMY AND DRAWING” 1928





Victor Perard “ANATOMY AND DRAWING” 196pp, Victor Perard, New York, 1928

 ニューヨーク・クーパー・ユニオンの解剖学講師ヴィクター・ペラードによる『解剖学と素描』。初版はペラードによる自費出版で、のちにDover出版からリプリント版が出版された。
 20世紀初頭の素描教育と結びついた美術解剖書の一つである。内容も当時は新しいものが多く、人体の横断面図や、骨格のフットプリント図は、医学書には見られたものの美術解剖ではあまり見かけない。解剖図は迫真の描写よりも、運動時の体表の起伏が重要視された、シンプルなものになっている。写真をトレースしたような輪郭に迷いのない線描も見られる。巻末にはエコルシェと称して様々な姿勢をした筋肉人の群像が描かれている。
 図版の引用はファウマーシャルリシェフリップ/トンプソンなどが見受けられる。リシェの引用に関しては、大腿の図にリシェ独特の「大腿筋膜の肥厚部」が描かれていてペラードは「Richer’s Ligament(リシェ靭帯)」と訳している。ヘイルは1971年の翻訳版で「Richer’s Band(リシェバンド)」と訳していたが、それ以前からリシェの名前を付けて訳されていたようである。
(初版、筆者蔵)

2016/05/30

Reference: Ranice W. Crosby / John Cody “Max Brödel: The Man Who Put Art Into Medicine” 1991


Ranice W. Crosby / John Cody “Max Brödel: The Man Who Put Art Into Medicine” 352pp, Springer, 1991

 ジョンズホプキンス医療研究所に在籍していたメディカル・イラストレーションの父マックス・ブルーデル(1870-1941)の経歴をまとめた書籍である。美術解剖学とメディカル・イラストレーションの志向の違いを知ることができる。
 本文には授業中や講評時の風景写真も掲載されており、解剖図の描写方法を学ぶ教育現場を伺い知ることができる。巻末にはモノクロで作品が掲載されている。
 ブルーデルの描写方法は、主に2種類あり、ペンによるハッチングを駆使して立体的に描く方法と、チャコールペンシルの粉末を画面にこすりつけて陰影をつける方法がある。ぞれぞれ平滑なボードの上に描いていたようだ。
 ブローデルの手がけた図版は、病変や術式を伝えるためのイラストがほとんどであるが、シュパルテホルツの解剖図譜などに図版を提供している。彼の弟子にはメイヨー・クリニックに勤務し、アメリカのメディカル・イラストレーション界に影響を残したラッセル・ドレイクがいる。
(初版、筆者蔵)

2016/05/29

José Parada y Santín “Anatomía Pictórica ensayo de antropología artística” 1894




José Parada y Santín “Anatomía Pictórica ensayo de antropología artística” 381pp, Viuda de Hernando y Compañía, Madrid, 1894

 スペインの医師でマドリード美術学校の解剖学教授ホセ・パラダ・サンチン(1857-1923)による『絵画用解剖学 美術人類学のエッセイ』。コンパクトなハンドブックであるが、多岐にわたる内容でボリュームがある。
 内容は、美術解剖学の歴史、骨学、筋学、形態学(表情や性差、運動を含む)、プロポーション、文化人類学の順で掲載されている。文化人類学の章では、主に頭部の美術表現の違いや、人種や文化による形態の違いについて記述されている。
 本文の図版はマーシャルの局所解剖図、キャンパーの顔面角、デュシェンヌの表情研究が引用され、美術解剖の歴史では、アルフェマルティネスザイラー、ルーベンス、ラファエロ、ミケランジェロ、レオナルドなどの解剖図や素描が引用されている。古代ギリシア彫刻『円盤投げ』の骨格図は、サルベージからの流れであろう。上肢と下肢の一部の骨格は写真が用いられている。オリジナリティーの高い図版は、スーパーインポーズ図で、パラダによる図ではないものの、アカデミー教育の人体素描と解剖学が密接に関わっていたことがうかがえる。
(初版、筆者蔵)

2016/05/28

Carl Schmidt “Wegweiser für das Verständnis der Anatomie beim zeichnen nach der natur und der antike” 1894




Carl Schmidt “Wegweiser für das Verständnis der Anatomie beim zeichnen nach der natur und der antike” 46pp, Tübingen, 1874

シュツットガルト美術学校の教授カール・シュミットによる『自然主義と古典主義後の描画のための解剖学を学ぶためのガイド』。
 簡素なハンドブックで、前半は図譜、後半はマリー・シュミットによる羅-独の美術解剖学用語集の二部構成になっている。図版はアルビヌスに基づいているが、骨格と同位置の筋の局所解剖図が並んで描かれている。見比べるように並べているのはアルビヌスの計画にはない。最後の図版はシュミットによる対角線を利用したプロポーションが掲載されている。図版パートのページレイアウトは縦横両方あり、書籍の小口側を画面の下に設定している。特に珍しいのは、後半の美術解剖学用語集で、解剖学用語集と記載していない点が興味深い。
(1894第2版?、筆者蔵)

2016/05/25

Auguste Péquégnot “Anatomie descriptive des formes humaines” 1845




Auguste Péquégnot “Anatomie descriptive des formes humaines” 48pp+24plates, Le Bailly, Paris, 1845

フランスの画家、オーギュスト・ペキニョー(1819-1878)による『解剖学 人体の形態解説』。オーギュスト・リオによる改訂増補版とある。簡潔なハンドブックである。
 図版は24枚の銅版画からなり、頭部の図にはギリシア彫刻の様式が見られる。背面左外側の図はウードンのエコルシェに姿勢が似る。全体的に独特の描写で、筋繊維や筋腱移行部が曖昧に描かれている。
 画面いっぱいに人体を収めるように描いているのが特徴で、こうした構図はマスカーニも行っているが、個人的にはボタニカルアートと印象が重なる。ボタニカルアートでもしばしば画面構図に収めることを重視し、対象の形状が画面構図に引き寄せられているのを見かける。ペキニョーの素描や柱状装飾の図は的確に描かれているが、本書の図版はそれらの作品とは印象が異なる。
(改訂増補版、筆者蔵)

2016/05/24

Jac Rijkse “ANATOMIE VOOR KUNSTENAARS” 1917





Jac Rijkse “ANATOMIE VOOR KUNSTENAARS”  242pp+63plates, H.Meulenhoff., Amsterdam, 1917

 ハーグ芸術大学の講師ヤク・レイクセによる『芸術家のための解剖学』。珍しいオランダの美術解剖書である。
 写真製版とリトグラフによる図を使用した解剖書で、骨の図版は写真、筋肉の図版は再構築して描かれている。解剖体を観察しているかのような写実表現を目指していたことは、筋の解剖図の描写から伺える。図版の情報量は19世紀前半の医学の局所解剖図並みである。例えば腹直筋を弓状線のやや下でカットしている点や、大腿部内側の内転筋管(ハンター管)など、美術解剖学で教えている情報よりも踏み込んだ形状が描かれている。
 美術解剖学の歴史も踏まえており、リシェファウからの引用や、ランテリの彫刻が図版に使用されている。巻末ページにはミケランジェロの素描も加えられている。
 本書は後年、B.Th. de Heijとともに改訂増補版が出版された。
(初版、筆者蔵)

2016/05/23

Wilhelm Ellenberger “HANDBOCH DER ANATOMIE DER TIERE FÜR KÜNSTLER BAND V. DER HAUND” 1911





Wilhelm Ellenberger “HANDBOCH DER ANATOMIE DER TIERE FÜR KÜNSTLER BAND V. DER HAUND” 20pp+16plates, Dieterich’sche Verlagsbuchhandlung, Leipzig, 1911

ドイツの動物解剖学の始祖ウィルヘルム・エレンバーガーの『芸術家のための動物解剖学のハンドブック 第5巻 犬』。
 美術解剖図において最高水準の図版の一つであろう。前面、側面、後面のみならず、上面と下面の図が描かれている。骨格図に体表のアウトラインを描いている点も美術的にポイントが高い。姿勢は頭部は側面観であるが、四肢は重ならないようにずらしている。解剖図としては完全な写実表現ではなく、筋の表面など形態を整え、概念的に処理されている。
 真上から見た図はともかく、真下から見た図を当時いかにして描いたのだろうか。興味が尽きない。
(初版、筆者蔵)

2016/05/20

Heidi Lenssen “ART and ANATOMY” 1947


Heidi Lenssen “ART and ANATOMY” 80pp, Barnes & Noble, Inc., New York, 1947

ハイジ・レンゼンによる『美術と解剖学』。初版はJ.J. Augustin Inc.より1946年に出版された。
 レオナルドやミケランジェロの素描の合間に、ペンと水彩による簡易な解剖図が掲載されている。解剖図はシーダーに基づく。筋肉は筋走行がほぼ描かれていない。骨格図が全て中間回内位になっている。
 本書は、昭和52年から昭和62年にかけて東京藝術大学の「人体美学」の授業(松下幸夫講師による)で使用されていたようである。
(第2版、筆者蔵)

Update: Alfred Fripp / Ralph Thompson “HUMAN ANATOMY FOR ART STUDENTS” 1911





Alfred Fripp / Ralph Thompson “HUMAN ANATOMY FOR ART STUDENTS” Seeley, Service & Co.,London, 1911

英国王のお抱え医師アルフレッド・フリップとガイズ病院の解剖学講師ラルフ・トンプソンによる『美術学生のための人体解剖学』。151カットのイラストは、フリップのいとこで南ロンドン・テクニカル・アート・スクールの人体素描修士イネス・フリップが手がけている。
 図版はオリジナリティーが高いが、写真から体表図を描き起こし、さらに浅層の筋肉をスーパーインポーズで示したトムソン様式である。巻末にも写真が幾つか掲載されている。そして、全身の骨格図は体表のアウトラインが描かれており、マーシャルのものに近い。
 おそらく本書は素描のような美術解剖図の最初期のものである。これ以前は版画技法による印刷が多かったが、写真製版によって素描がダイレクトに印刷できるようになった。美術解剖学は美術教育の基礎の一つである人体素描と寄り添うように発展したため、図版が鉛筆や木炭で描いた素描に移行したのは自然な流れといえる。
(初版、筆者蔵)

リプリント版解説:Reprint ed.

2016/05/19

Gustav Fritsch “DIE GESTALT DES MENSCHEN” 1899




Gustav Fritsch “DIE GESTALT DES MENSCHEN” 173pp+25plates, Paul Neff Verlag, Stuttgart, 1899

 ドイツの解剖学者でベルリン大学教授グスタフ・フリッチュ(1838-1927)による『人の形』。
 本書はエミール・ハーレスとカール・シュミットらの美術解剖書を編纂したもので、19世紀後半にしばしば出版された美術解剖学的情報の編纂と体系化を目指した書籍の1つである。そのため、図版は様々な美術解剖書から寄せ集められている。
 引用は、ハーレスの運動生理学の図のほかに、解剖図はショシエサルベージ、スーパーインポーズはトムソン様式、連続写真はマイブリッジ、プロポーション図はザイジングとシュミット、シャドウからの引用が見られる。他の書籍に見られない図版としては、ウィルヘルム・ワルダイエルの解剖模型がある。ワルダイエルは咽頭輪で有名な解剖学者である。ドイツ好みの形態なのか、非常に明瞭で硬質な表現をしている。
 タイトルの『人の形』は、今の所バメスと本書でしか見られないが、美術解剖学が目指す人体観を幅広く簡潔に表現していて秀逸に思う。
(初版、筆者蔵)