2015/05/03

Jean-Galbert Salvage "Écorché of the Borghese Gladiator" (1804)




Écorché of the Borghese Gladiator by Jean-Galbert Salvage, 1804, Plaster, 199 x 150 x 157cm
パリ、エコール・デ・ボザール形態学研究室蔵

Salvage(1770-1813)によって1804年に制作されたこのエコルシェの石膏像は、エコール・デ・ボザールの形態学研究室に収蔵され、校内の劇場型の素描教室に常設されている。教室の対面には原作の実寸大の石膏像が配置され、体表と内部構造の比較を行えるようになっている。
 元となった原作は、ルーヴル美術館に収蔵されているギリシャ彫刻、Bolgese Gladiator(ボルゲーゼの拳闘士)である。日本でも美術予備校の教材として石膏製の胸像が使用されているため知名度は高い。ボルゲーゼの拳闘士像は前2世紀ごろのローマンコピー(オリジナルは前1世紀、AgasiasEpheusの銘あり)で、美術史の有名作としてたびたび取り上げられた。この像も19世紀中期の美術解剖書にたびたび登場する。例えば、Duval"PRÉCIS D'ANATOMIE A L'USAGE DES ARTISTES"1881)やKollmann"PLASTISCHE ANATOMIE DES MENSCHLICHEN KÖRPERS"(1886)などである。
 像の姿勢は、頭部、頚部、体幹、左下肢がほぼ直線的に並んでいる。右足を前方に踏み込み、右手は後ろに引き、左手を90°外転させて目線の先に突き出している。頚部は体幹から左側に強くひねり、胸と右耳が同一平面上にある。エコルシェとしては、腋窩と側方の体幹の構造や右大腿の内側の構造が観察しやすい。
 エコルシェ像は、しばしばスーパーインポーズ法によって制作されている。この像もスーパーインポーズ的で、頚部のねじれ(特に胸鎖乳突筋、顎二腹筋)など、表現のために調整された構造が、実際の人体と比較した際に違和感として明らかになっている。この解剖学的な所見は、美術の古典作品に新たな観点を与えてくれる。

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