書籍分類
19世紀の解剖書はサイズと内容から以下の体裁に分類される。分類の中間に位置し、2種類以上またがる書籍もある。
テキストブック:文書による記述のみで構成された書籍。印刷技術による制約で、活字と図版を同一のページもしくは同一の書籍に掲載できなかった初期~中期に見られる。別冊の大判アトラスと組み合わせになっていることが多い。医師もしくは解剖を体験している著者が執筆している。ウェブアーカイブ化され、閲覧・ダウンロードできるケースもある。Bertinatti、Gerdy、Fau、Seilerなどの書籍がある。
教科書:文章による記述と小さな図版を同一ページ内に組み合わせた学習参考書。最もポピュラーな体裁で、美術を学ぶ学生だけでなく、講師に向けて書かれていることもある。医師もしくは解剖を体験している著者が執筆しているケースが多い。Duval、Cuyer、Kollmann、Thomson、Heupel-Siegen、Mollier、Bammesなどの書籍がある。
アトラス:図版によって構造を提示する書籍。B4サイズ程度の大型のものが多く、なかには長辺が60センチを超える版画もある。テキストは短く簡潔にまとめられ、別冊のテキストブックと組み合わせになっていることがる。Fau、Rimmer、Richer、Roth、Sparkesなどの書籍がある。
ハンドアトラス:小型のアトラスで、図版によって構造の概観を提示する書籍。図は全体図が多く、局所図は少ない。小型書籍にすることで、テキストブックとのサイズ違いや、大判アトラスの持ち運びにくさを解決した。Fau、Bossuなどの書籍がある。
複合書:一冊ではあるものの、印刷技術の制約から内容ごとに巻分けされた書籍で、表紙または扉絵が一冊の書籍の中に複数ページある。テキストとアトラスが一冊にまとまっていることもある。Harless、Froriep、Fau/Cuyerなどの書籍に見られる。
医学分野の解剖学と違い、解剖の手順を示した実習書、解剖体を撮影した写真が主要な図版となる写真集はない。写真図版はほとんどの書籍が生体の体表写真か作品写真を用いている。Mollierなど一部解剖体の写真を図版に使用した例もある。
書籍の体裁は、ハードカバー、ソフトカバーのほかに、書籍として背を綴じられたものと、紙葉によって分かれているものがある。カバーに関しては、19世紀の書籍の表紙は職人に依頼して装幀したケースがあるため、表紙の材質やデザインが異なっていることがある。紙葉に分かれた体裁の書籍はアトラスなど大型書籍に用いられ、写本としても使われた。この体裁には保存するための厚紙製のカバーが付属している。
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